全前脳胞症(holoprosencephaly)は脳の正中部の異常であり、前脳・中脳・菱脳の 3 脳胞から 5 脳胞に移行する時期の障害と考えられている。 嗅球や嗅索などの嗅脳の無形性を伴い、鶏冠(crista Galli)や篩板(lamina cribrosa)は欠如する。 全前脳胞症は一般に葉形成の程度から alobar, semilobar, lobar type の三つの亜型に分類されることが多い。
図A: 妊娠 20 週齢の alobar type。 後頭部からの外観。 大脳縦裂を欠き、大脳半球に分かれていない。 後頭部は膜様となり、脳室から連続した大きな cyst を形成していたが、それが解剖時に collapse した。
図B: 妊娠 37 週齢の lobar type。 大脳底面から見たところ。 大脳縦裂が形成されている。 側頭葉も区別される。 脳幹、小脳は良く形成されている。
図C: Alobar type の大脳冠状断面。 脳回の形成は認められない。 正中構造物が形成されず単脳室となっている。
図D: 全前脳胞症ではさまざまな顔面奇形を伴うが、そのうち最も重症なものは単眼症(cyclopia)である。 単一の眼裂(single eyelid opening)の上に長鼻(proboscis)が位置している(左図)。 眼裂を通る水平断面の組織像(右図)。 実際には眼球は左右 2 個誘導されており、それらが極めて近接する(synophthalmia)。 視神経は単一だが(矢印)、左右の眼球内にある dysplastic な網膜から伸びた軸索の束は、それぞれ視神経の左右側を別々に走行する。