ALS with demetia: ALS-D
本邦では、世界に先駆けて ALS と痴呆の問題が検討されてきた経緯がある。 現在、 ALS with demetia としてその存在は明白であると同時に、前頭側頭型痴呆の一型として、その病理学的基盤も整理されてきている。 ALS の側頭葉の特定部位に明瞭な病変をみることがある(ときに、痴呆の臨床的記載のない例もある)。 それは、側頭葉極背内側部の皮質浅層(II-III 層)、海馬 CA1-支脚以降部、扁桃核、および迂回回・吻側海馬傍回の変性(神経細胞脱落とグリオーシス)である。 加えて、これらの海馬歯状回顆粒細胞、内嗅野、側頭葉皮質、前頭葉皮質の小型神経細胞に出現する ubiquitin 陽性の封入体である。 これらは、電顕的には、不明瞭な線維状構造と電子密度の高い不規則な顆粒との混合物である。 前角でみられた ubiquitin 陽性封入体、そしてこれらの小型神経細胞に出現する ubiquitin 陽性封入体、 ubiquitin の標的蛋白は依然として不明である。
図A: 海馬 CA1-支脚(subiculum)移行部の限局性病変。 錐体神経細胞の脱落と小さなグリア核(astrocyte の増生)の増加。
図B: 側頭葉極背内側部の II-III 層の神経細胞脱落とグリオーシス。
図C: 歯状回顆粒細胞の胞体内にみられる類円形あるいは三日月形をした ubiquitin 陽性の封入体。 歯状回顆粒細胞そのものはよく保たれている。
図D: 側頭葉皮質浅層の ubiquitin 陽性の封入体。 短い線維状の陽性構造物(dystrophic neurites)も散見される。