先送りしてきた疑問に対する答えである。 現在、 MSA という疾患概念は新たな細胞病理学的発見によって不動のものとなった。 それは、これら SNA、 OPCA、 SDS という全ての病型における実に特徴的なグリア細胞内嗜銀性封入体 glial cytoplasmic inclusion (GCI)の出現である。 GCI は oligodendrocyte の胞体内に形成される。 それらの病型において、 GCI の数に部位的差異はあるが、いずれにおいても CNS の広範な部位に認められる。 したがって、厳密な意味で、真の SNA、 OPCA は存在しない。 SDS という臨床診断の例は、一般に SND > OPCA の像を呈するが、元来、病理学的診断名としてそれを用いるには無理があった。 つまり、 SNA、 OPCA、 SDS という病型は存在しても、それはあくまで MSA のひとつの表現型であり、その病態発生の基盤は同じと考えられる。 昔の症例を見直してみる。 通常の染色でも、 Bodian 染色(銀染色のひとつ)でも、よくよく注意してみるとその存在が分からなくはない。 ただ、その染色性が弱く、その構造物は目に飛び込んでこない(もっとも、飛び込んでくれば、誰にでも分かる)。 現在、その GCI は α-synuclein 陽性、 tau 陰性であることも分かっている。
図A: 変性の強い被殻。 多数の GCI (G-B 染色)。
図B: 変性の比較的軽い橋核。 少数ながら嗜銀性の線維状構造物が神経細胞の胞体内や核内にもみられる(G-B 染色)。
図C: 一見、正常な前頭葉白質。 烏帽子状にみえる α-synuclein 陽性 GCI。
図D: 橋核。 GCI に加え、神経細胞にも α-synuclein 陽性の所見がみられる。 突起様の陽性構造物もある。