‘たかが病理、されど病理’

臨床医学における病理学的重要性に議論の余地はない。 多彩な病態を特徴とする脳神経領域においては、ことさらである。 それにもかかわらず、脳神経病理学における後継者作りは困難を極めている。 古くさいとの印象が強い上に、高度な外科手術と同様の地道な習得訓練が要求される学問体系が嫌われ、病理学を志す若者は圧倒的に少ない。 一方で、これからの神経内科医や脳外科医を育む指導者はこの神経病理学の重要性を十分に認識はしているものの、医療の最前線にあって、それらの若い臨床医になかなかまとまった学習期間を提供できないでいることも事実である。

さて、どうすればよいのか。 意志はあっても時間のない現代人の悩みは、向上心をもつ臨床医にも共通している。 自己のスケジュールに合った学習法さえ与えられれば、飛躍的な能力の向上がもたらされる場合も少なくない。 病理学は画像解析を中心とした経験型学習を主流とする学問であり、ヴァーチャル環境下でとくに学習効果の上がる学問である。

新潟大学 21世紀COEプログラム 「脳神経病理学研究教育拠点形成」 の取り組みのひとつとして、われわれは、全国に存在する心ある臨床医を対象に、新潟大学脳研究所の所有する世界有数の標本をベースとした、効果的な 「自己教育システム」 の構築に向けて動き出した。 今回の 「e-learning 神経病理」 は、その first version で、若手臨床医、とくに神経内科医に標準を絞って作成されたものである。 教育とは、もともと、教える側にも教わる側にも共通した勉学の過程である。 意見交換によって、お互いの能力を高めあう場としても活用したい。

新潟大学 脳研究所 病理学分野       高橋 均
新潟大学 脳研究所 統合脳機能研究センター 中田 力